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異譚メルヘン第二話カエルのおじさま


さてそれからこの美しい息子は母親を連れていじわるなお百姓の家を出ると別のへやってきましたそして親切なお百姓のもとでやとわれると毎日まじめに働いて母親に楽をさせましたこの家の人たちは若者がすぐに仕事をおぼえとても働きものだったのですっかり気に入ってしまいましたそこでほどなく家のあるじは若者にどうだろうわしの娘のどれかひとりと結婚してずっとうちで暮らす気はないかね?とたずねました。

けれども若者はありがとうございますでも僕が結婚する人はもうきまっているんですと答えいくら説得されても話を受けようとはしませんでした婿入りの話はこの家ばかりでなくじゅうからありましたが若者はそのたびに同じことを言ってみんなことわってしまいました。

そんなある日おなかの大きな娘がをとおりかかりお百姓の家にひと晩泊まることになりましたそれは母親が森で会ったあの娘でしたところが娘があんまりやつれていたせいで母親はちっとも気がつきませんでしたそれに娘のほうも母親のことなんておぼえてはいませんでした。

ところで夜になると急にこの娘に子どもが生まれるきざしがありましたそこであわててお産婆さんが呼ばれたのですがそうして生まれてきたのはひとかかえもあるような大きなおたまじゃくしでしたそのことを知った家の人たちはみんなこの娘のことが気味悪くなって早く家から追いだしてしまおうと考えましたけれども話を聞いた美しい若者はすぐに娘のところへやってきてこの人こそ僕の花嫁ですと言いましたそして生まれてきた子を抱きあげて口づけするとこの醜いおたまじゃくしは母親そっくりの美しい赤ん坊に変わりました娘もそれを見るとこの若者をいとおしいと思う気もちでいっぱいになってよろこんでさしだされた手を取りましたそれにこの娘はほんとうはすなおでやさしい子だったのでほどなく花婿の母親ともすっかり仲よしになりました。

やがて娘が元気になるとふたりの結婚をゆるしてもらうために娘の父親をたずねることになりましたところが娘の生まれたへ来てみると父親はすでに死んでしまったあとでしたこの人は家の仕事がちっともできず娘がいなくなってひとりきりになると日々の食事にも困るようなありさまでしたそしていつしかからだをこわし寝こんでも誰にも看病してもらえずにとうとう人知れず息を引き取ってしまったのです。

この父親には娘のほかに家族がなかったので家や畑は娘が継ぐことになりました広い畑には作物が豊かに実っていたので娘も若者も取りいれのためにおおいそがしになりましたやがて喪があけるとふたりは教会結婚式をあげましたそして母親をいたわりながら家族みんなでいつまでもしあわせに暮らしたということです。

さてお話はこれでおしまいほらそこをかわいい子猫がかけていくもし捕まえることができたならすてきな毛皮のコートがつくれるよ。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新