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さて、それからこの美しい息子は、母親を連れていじわるなお百姓の家を出ると、別の村へやってきました。そして親切なお百姓のもとでやとわれると、毎日まじめに働いて、母親に楽をさせました。この家の人たちは、若者がすぐに仕事をおぼえ、とても働きものだったので、すっかり気に入ってしまいました。そこでほどなく、家のあるじは若者に「どうだろう、わしの娘のどれかひとりと結婚して、ずっとうちで暮らす気はないかね?」とたずねました。
けれども若者は「ありがとうございます。でも、僕が結婚する人は、もうきまっているんです」と答え、いくら説得されても話を受けようとはしませんでした。婿入りの話は、この家ばかりでなく村じゅうからありましたが、若者はそのたびに同じことを言って、みんなことわってしまいました。
そんなある日、おなかの大きな娘が村をとおりかかり、お百姓の家にひと晩泊まることになりました。それは、母親が森で会ったあの娘でした。ところが、娘があんまりやつれていたせいで、母親はちっとも気がつきませんでした。それに娘のほうも、母親のことなんておぼえてはいませんでした。
ところで、夜になると急に、この娘に子どもが生まれるきざしがありました。そこであわててお産婆さんが呼ばれたのですが、そうして生まれてきたのは、ひとかかえもあるような大きなおたまじゃくしでした。そのことを知った家の人たちは、みんなこの娘のことが気味悪くなって、早く家から追いだしてしまおうと考えました。けれども、話を聞いた美しい若者は、すぐに娘のところへやってきて「この人こそ、僕の花嫁です」と言いました。そして、生まれてきた子を抱きあげて口づけすると、この醜いおたまじゃくしは、母親そっくりの美しい赤ん坊に変わりました。娘もそれを見ると、この若者をいとおしいと思う気もちでいっぱいになって、よろこんでさしだされた手を取りました。それにこの娘は、ほんとうはすなおでやさしい子だったので、ほどなく花婿の母親ともすっかり仲よしになりました。
やがて娘が元気になると、ふたりの結婚をゆるしてもらうために、娘の父親をたずねることになりました。ところが、娘の生まれた村へ来てみると、父親はすでに死んでしまったあとでした。この人は家の仕事がちっともできず、娘がいなくなってひとりきりになると、日々の食事にも困るようなありさまでした。そしていつしかからだをこわし、寝こんでも誰にも看病してもらえずに、とうとう人知れず息を引き取ってしまったのです。
この父親には娘のほかに家族がなかったので、家や畑は娘が継ぐことになりました。広い畑には作物が豊かに実っていたので、娘も若者も取りいれのためにおおいそがしになりました。やがて喪があけると、ふたりは教会で結婚式をあげました。そして母親をいたわりながら、家族みんなでいつまでもしあわせに暮らしたということです。
さて、お話はこれでおしまい。ほらそこを、かわいい子猫がかけていく。もし捕まえることができたなら、すてきな毛皮のコートがつくれるよ。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |