pagetop

異譚メルヘン第一話一卵性兄妹


そういうわけでこの魔女は夕食のときお皿のひとつにを入れておきましたそれを口にしたキャリス次の朝になるとひどい熱を出してベッドから起きることもできなくなりましたそこで魔女アサメイにこう言いました。これはたいへんだいそいで薬をやらないとおまえの双子は助からないよだけど悪いことに必要な薬草をちょうど切らしていてねあたしはこの子から目を離せないからおまえが森で採ってきなさい場所はあたしの使い魔が知ってるからいっしょに連れていくんだよ」それを聞いたアサメイすぐに使い魔のコウモリと森へ出かけていきましたけれどもほんとうは消しの薬草ならちゃんと家にあったのですそしてこの悪魔森のなかでアサメイを殺してその心臓と肝臓を持ち帰ることになっていたのでした。

やがてアサメイとコウモリは森のいちばん深いところまでやってきましたところがけんめいに薬草をさがすアサメイを見ているうちに使い魔はだんだん気のになってついほんとうのことをしゃべってしまいましたするとアサメイは泣きだしてコウモリさんお願いだから殺さないでアサメイが死んでしまったらキャリスだって生きてはいられないからと言うのでしたその姿があんまり美しかったので使い魔はひどくかわいそうに思いこのまま見のがしてやることにしましたそしてアサメイを行かせると森の泉へ遊びに来ていたの子を殺してその心臓と肝臓をかわりに持って帰りましたばちあたりな魔女それがアサメイのものだとすっかり信じて塩ゆでにするとみんなキャリスに食べさせてしまいました。

次の朝になるとあんなに高かった熱がうそのようにさがりキャリスはすっかりもとどおりになっていました目をさましたキャリスアサメイの姿が見えないのでおばあさんのところへ行ってわけをたずねましたそこで魔女あの子はねおまえのために森へ薬草をつみに行ってに食べられてしまったんだよだからおまえはあの子のぶんまでしっかり生きてりっぱな魔女にならないといけないよと答えましたそしてしばらく泣けばキャリスの気も晴れて双子のことは忘れてしまうだろうと思っていました。

ところがそれからというものキャリスはすっかり元気をなくし食事もろくにのどをとおらなくなりましたそしてどんどんやせ細りとうとうほんものの病気になってしまいましたおばあさんは知っているかぎりの治療をためしてみましたがなにひとつ効きめがなく容態は日に日に悪くなるばかりでしたやがて手のつきたおばあさんはほかの魔女から知恵を借りるよりほかなくなりましたそこで使い魔のコウモリにあとをまかせるとホウキにのって出かけていきました。

その日もキャリスベッドのなかでしくしく泣いているばかりでしたそしてコウモリがようすを見に行ってもコウモリさんお願いだからかまわないでアサメイが死んでしまったらキャリスだって生きてはいられないからと言うのでしたその姿があんまり美しかったので使い魔はひどくかわいそうに思いついほんとうのことを教えてしまいましたするとキャリスは泣きやんでベッドの上で起きあがりましたそしておばあさんが名づけ親魔女を連れて戻ったときにはキャリスの病気はすっかりよくなっていました。

そういうわけでまた魔術の練習がはじめられましたキャリスはあいかわらずちっとも魔法が使えるようになりませんでしたがおばあさんにはもうしんぼうづよく教えつづけるよりほかありませんでした勉強の時間がおわるとキャリスはすぐに家を飛びだして森の泉へとかけていきましたそして水面にうつる自分の顔を見ては仲よしの双子の名まえを呼び日が落ちるまでずっとおしゃべりをして過ごすのでした。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新