◆ Märchen << HKM1 < i ii iii iv v vi vii viii ix
ひとり残されたキャリスは、双子の身が心配でなりませんでしたが、自分では塔を出ることさえできませんでした。そこで「いったいどうしたらいいの? アサメイを助けるためだったら、キャリスはなんだってするのに」と嘆きながら、ただぽろぽろと涙をこぼしているよりほかありませんでした。
するとそこへ、花嫁さがしの旅に出ていた、巨人の国の王子さまがとおりかかりました。キャリスの声を耳にした王子さまは、塔の近くへやってくると、身をかがめて窓をのぞきこみました。そして泣いているキャリスを見たとたん、その姿があんまり美しかったので、ひと目で気に入ってしまいました。王子さまはキャリスをやさしくなぐさめ、どうして泣いているのかとたずねました。
そこでキャリスは、けんめいにわけを話すと「お願いです巨人さん、アサメイを救ってくれるなら、キャリスはどんなお礼でもします」と言いました。すると王子さまは、
「もし君が女になることを選んで、私と結婚してくれるなら、君の双子を助けてあげよう」と答えました。それを聞いたキャリスは、
「わかりました」と答え、銀の指輪をはずして言いました。「それではこれを、誓いのあかしとしてさしあげます。約束を守ってくれたなら、キャリスはあなたのものになります」。
指輪を受けとった王子さまは、すぐに魔女を追って走りだしました。そしてひと足ごとに七里を進み、あっというまに追いつくと、まるで飛んでいるハエでも殺すみたいに叩きつぶしてしまいました。それから王子さまは、いいなづけのもとへ戻ってくると「もう君の双子はだいじょうぶだよ」と言いました。そして、キャリスを塔から出して肩にのせると、南の果てにある故郷へと連れて帰りました。
やがて巨人たちの王国に到着すると、王子さまはキャリスをかまどのなかに入れ、ひと晩そこで眠らせました。すると目がさめたときには、キャリスはすっかり女になっていました。けれどもこの美しい花嫁は「たとえあんな魔女でも、キャリスとアサメイにとってはたったひとりのおばあさんだったんです。喪があけるまでは、あなたと結婚するわけにはいきません」と言いました。そこで花婿もしかたなく、一年のあいだ結婚式を待つよりほかありませんでした。キャリスは黒い服に着がえると、部屋にこもって誰とも会おうとしませんでした。いっぽう王子さまは細工師を呼んで、キャリスがくれた銀の指輪を、自分の剣のつかに埋めこませました。この指輪は花婿には小さすぎて、指にはめることができなかったのです。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |