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異譚メルヘン第一話一卵性兄妹


ひとり残されたキャリス双子の身が心配でなりませんでしたが自分ではを出ることさえできませんでしたそこでいったいどうしたらいいの? アサメイを助けるためだったらキャリスはなんだってするのにと嘆きながらただぽろぽろと涙をこぼしているよりほかありませんでした。

するとそこへ花嫁さがしの旅に出ていた巨人の国王子さまがとおりかかりましたキャリスの声を耳にした王子さまの近くへやってくると身をかがめて窓をのぞきこみましたそして泣いているキャリスを見たとたんその姿があんまり美しかったのでひと目で気に入ってしまいました王子さまキャリスをやさしくなぐさめどうして泣いているのかとたずねました。

そこでキャリスけんめいにわけを話すとお願いです巨人さんアサメイを救ってくれるならキャリスはどんなお礼でもしますと言いましたすると王子さまは、

もし君が女になることを選んで私と結婚してくれるなら君の双子を助けてあげようと答えましたそれを聞いたキャリスは、

わかりましたと答え銀の指輪をはずして言いました。それではこれを誓いのあかしとしてさしあげます約束を守ってくれたならキャリスはあなたのものになります」。

指輪を受けとった王子さますぐに魔女を追って走りだしましたそしてひと足ごとに七里を進みあっというまに追いつくとまるで飛んでいるハエでも殺すみたいに叩きつぶしてしまいましたそれから王子さまいいなづけのもとへ戻ってくるともう君の双子はだいじょうぶだよと言いましたそしてキャリスから出して肩にのせると南の果てにある故郷へと連れて帰りました。

やがて巨人たちの王国に到着すると王子さまキャリスかまどのなかに入れひと晩そこで眠らせましたすると目がさめたときにはキャリスはすっかり女になっていましたけれどもこの美しい花嫁たとえあんな魔女でもキャリスアサメイにとってはたったひとりのおばあさんだったんです喪があけるまではあなたと結婚するわけにはいきませんと言いましたそこで花婿もしかたなく一年のあいだ結婚式を待つよりほかありませんでしたキャリスは黒い服に着がえると部屋にこもって誰とも会おうとしませんでしたいっぽう王子さまは細工師を呼んでキャリスがくれた銀の指輪を自分の剣のつかに埋めこませましたこの指輪は花婿には小さすぎて指にはめることができなかったのです。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新