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戦乙女のお姫さまは、六本足の馬を駆り、あっというまに巨人たちの国へたどりつきました。ところでその日は、魔女が死んでからちょうど一年が過ぎた日で、キャリスと王子さまとの結婚式がおこなわれることになっていました。さてその王子さまはといえば、結婚前の最後のひとときを、仲間たちと狩りをして楽しんでいるところでした。そこでお姫さまは、ひそかに一行のあとをつけ、機会がおとずれるのを待つことにしました。巨人たちはそれから森じゅうをかけまわり、りっぱな獲物をたくさんしとめました。やがて満足した王子さまは、獲物を運んで料理しておくよう言いつけると、仲間たちをさきに帰しました。そしてひとり湖へおりていくと、鎧も服もすっかり脱ぎすてて、つめたい水で汗を流しはじめました。
ずっとようすをうかがっていたお姫さまは、それを見て木かげから飛びだすと、すばやく弓を引きしぼりました。放たれた矢はねらいをあやまたず、王子さまの心臓を背中からつらぬきました。ところがこの巨人は、それでも倒れることなく振り返り、敵を迎えうつべく岸辺の剣へと手をのばしたのです。けれどもゆだんのないお姫さまは、まだ気を抜いたりはしていませんでした。すでに抜き身の白刃を振りかざし、相手のすぐ目の前へとつめよっていたのです。そして王子さまの指が剣のつかに触れたときには、その首をめがけて鋭い一太刀をあびせていました。するとそのとたん、剣に埋めこまれた指輪のちからが働いて、反対にお姫さまの首が飛んでしまいました。
お姫さまが死ぬやいなや、あっというまに戦乙女の国は消えうせて、アサメイはただひとり、見わたすかぎりの雪原に取り残されました。自由になったアサメイは、巨人たちの国をめざし、南へ向かって歩きはじめました。やがておばあさんの家のそばまで来ると、よく見なれたなつかしい人かげが、向こうから近づいてくるのが目に入りました。それというのも、結局あれからすぐに王子さまも、矢傷がもとで死んでしまい、巨人たちの国も消えていたのです。
ようやく再会できたキャリスとアサメイは、おたがいにかけよるとしっかりと抱きあい、なんどもキスを交わしました。キャリスが「もうけっして離さないよ」と言うと、アサメイは「死がふたりを別つまでね」と答えました。それからこの仲よしの双子は、ずっと誰とも結婚することなく、深い森の奥にふたりきりで、いつまでもしあわせに暮らしました。もし死んでいなければ、この子たちはいまでもそこで生きています。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |