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異譚メルヘン第一話一卵性兄妹


戦乙女お姫さま六本足の馬を駆りあっというまに巨人たちの国へたどりつきましたところでその日は魔女が死んでからちょうど一年が過ぎた日でキャリス王子さまとの結婚式がおこなわれることになっていましたさてその王子さまはといえば結婚前の最後のひとときを仲間たちと狩りをして楽しんでいるところでしたそこでお姫さまひそかに一行のあとをつけ機会がおとずれるのを待つことにしました巨人たちはそれから森じゅうをかけまわりりっぱな獲物をたくさんしとめましたやがて満足した王子さま獲物を運んで料理しておくよう言いつけると仲間たちをさきに帰しましたそしてひとり湖へおりていくと鎧も服もすっかり脱ぎすててつめたい水で汗を流しはじめました。

ずっとようすをうかがっていたお姫さまそれを見て木かげから飛びだすとすばやく弓を引きしぼりました放たれた矢はねらいをあやまたず王子さまの心臓を背中からつらぬきましたところがこの巨人それでも倒れることなく振り返り敵を迎えうつべく岸辺の剣へと手をのばしたのですけれどもゆだんのないお姫さままだ気を抜いたりはしていませんでしたすでに抜き身の白刃を振りかざし相手のすぐ目の前へとつめよっていたのですそして王子さまの指が剣のつかに触れたときにはその首をめがけて鋭い一太刀をあびせていましたするとそのとたん剣に埋めこまれた指輪のちからが働いて反対にお姫さまの首が飛んでしまいました。

お姫さまが死ぬやいなやあっというまに戦乙女の国は消えうせてアサメイはただひとり見わたすかぎりの雪原に取り残されました自由になったアサメイ巨人たちの国をめざし南へ向かって歩きはじめましたやがておばあさんの家のそばまで来るとよく見なれたなつかしい人かげが向こうから近づいてくるのが目に入りましたそれというのも結局あれからすぐに王子さま矢傷がもとで死んでしまい巨人たちの国も消えていたのです。

ようやく再会できたキャリスアサメイおたがいにかけよるとしっかりと抱きあいなんどもキスを交わしましたキャリスもうけっして離さないよと言うとアサメイ死がふたりを別つまでねと答えましたそれからこの仲よしの双子ずっと誰とも結婚することなく深い森の奥にふたりきりでいつまでもしあわせに暮らしましたもし死んでいなければこの子たちはいまでもそこで生きています。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新