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異譚メルヘン第一話一卵性兄妹


さてそのころアサメイはといえば森を抜けたずっとさきにある北の果ての国へとやってきていましたそこは戦乙女お姫さまが治める王国女でなければ住むことをゆるされていませんでしたお城のまわりにはまっ白な城壁がありましたがそばへ近づいてみるとそれはすっかりでできていましたこの国に足を踏みいれた男たちはみんな殺されることになっていたのですそしてこの国に足を踏みいれた女たちはみんなお姫さまに仕える兵士にならなければなりませんでした。

やがてアサメイ王国を守る娘兵士たちに捕らえられてしまいましたところが娘たちはこの旅人が男とも女ともつかなかったのでどうしたらよいのかわかりませんでしたそこでアサメイお姫さまの前に引きだされその判断にゆだねられることになりました。

アサメイを目にした戦乙女お姫さま考えたすえに言いました。おまえは男ではないからおきてによって殺すことはしないが女でもないのでわが軍の兵士として迎えるわけにもいかないそこでどうだろうわたしのそばに仕え身のまわりの世話をするつもりはないか?」

けれどもアサメイお願いですお姫さまどうかこのまま行かせてくださいと答えましたそしてわけを話すとキャリスはひとりっきりであのおそろしい魔女のもとに残されているんです早く助ける方法を見つけて迎えに行かなければなりませんと言いました。

それを聞いたお姫さま残念だがひとたびこの国に足を踏みいれたからには誰も生きたまま帰してやることはできないわたしの申し出を受けないというのなら死ぬまでに入っていてもらうだけだと告げたのですがアサメイはどうしてもあきらめようとしませんでしたそこでこのお姫さまだんだんかわいそうになってきてならばそのかわりにわが騎士団を派遣しておまえの双子を連れてこさせようそれなら文句はあるまいなと言いましたそういうわけでアサメイよろこんでお姫さまづきの小間使いをすることになりました。

送りだされた騎士団それから一年近くたってようやく戻ってきましたがそこにキャリスの姿はありませんでしたさすがの勇敢な乙女騎士たちにも巨人たちの国から王子さま花嫁を連れだすことはできなかったのです報告を聞いたアサメイキャリスがまもなく結婚しなければならないと知ると心配でたまらなくなりましたそしていったいどうしたらいいの? キャリスを助けるためだったらアサメイはなんだってするのにと嘆きながらぽろぽろと涙をこぼすのでした。

すると戦乙女お姫さま泣いているアサメイがあんまり美しかったのでやさしくなぐさめてやらずにはいられませんでしたずっとそばへ置くうちにすっかりこの小間使いが気に入ってしまったのですそこでお姫さま巨人族王子となれば手ごわい相手だわたしがみずから出るよりほかにかなうものはいないだろうだがもしおまえが男になることを選んでわたしと結婚してくれるならおまえの双子を助けてあげようと言いましたそれを聞いたアサメイは、

わかりましたと答え束ねていた金の髪を切り落として言いました。それではこれを誓いのあかしとしてさしあげます約束を守ってくれたならアサメイはあなたのものになります」。

そういうわけでお姫さまアサメイかまどのなかに入れひと晩そこで眠らせましたすると目がさめたときにはアサメイはすっかり男になっていましたそれを見とどけた勇ましい花嫁戦じたくをととのえるとさっそうと出かけていきました。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新