pagetop

異譚メルヘン第三話天国への道


やがて役立たず小高い丘の上へたどりつきましたすると向こうから年老いた醜い小人がやってきてごきげんようお嬢さんとあいさつをしました。

そこで役立たずありがとう小人さんでもあたしごきげんになんてなれっこないわと答えました。だって神さまがあたしをおつくりになったせいで家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。

それでこれからどうするつもりだね」。

神さまをたずねてみもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよでも困ったわどうしたら天国へ行けるのかわからないの」。

それを聞いた小人なんだいそんなことも知らないのかねと笑いましたそして炎のように赤い色をしたパンを取りだすとだったらこの聖体パンをやろうこいつをみんなたいらげてあとはただ眠っているだけでいい目がさめたときにはちゃんと天国についてるだろうさと言いました。

役立たずがおおよろこびでお礼を言うと小人はパンを渡して去っていきましたそこで役立たずさっそくパンをたいらげると丘の上によこたわりましたところがしばらくすると食べたパンがおなかのなかで燃えはじめとても眠るどころではなくなってしまいました役立たずはパンをぜんぶ吐きだしましたがおなかの火事は収まりませんするとそこへ近くの川へ水くみに来ていたお百姓がとおりかかり持っていた桶の水を役立たずに飲ませましたやがて桶がからっぽになるとおなかがはちきれそうになった役立たずまた飲んだ水をすっかり吐きだしてしまいましたけれどもそれでようやく火事は収まり役立たずはふたたび起きあがれるようになりました。

わけを知ったお百姓こんなパンを食べたところで天国へはけっして行けないよいいかいもうこんなことをしてはだめだからねと言いましたそういうわけで役立たずまた天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでしたけれどもおなかのなかをすっかりやけどしてしまったせいでもうミルクのほかにはなにも口にすることができませんでした。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新