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異譚メルヘン第三話天国への道


それから役立たず一本の大きな樫の木の下へたどりつきましたすると向こうから年老いた醜い小人がやってきてごきげんようお嬢さんとあいさつをしました。

そこで役立たずありがとう小人さんでもあたしごきげんになんてなれっこないわと答えました。だって神さまがあたしをおつくりになったせいで家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。

それでこれからどうするつもりだね」。

神さまをたずねてみもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよでも困ったわどうしたら天国へ行けるのかわからないの」。

それを聞いた小人なんだいそんなことも知らないのかねと笑いましたそしてたくさんの赤い石がついているロザリオを取りだすとだったらこの数珠をやろうこれは昔ある綱屋が大切な娘の結婚式に持っていったものなんだがねこいつを首飾りみたいに首にかけてあとはただ眠っているだけでいい目がさめたときにはちゃんと天国についてるだろうさと言いました。

役立たずがおおよろこびでお礼を言うと小人ロザリオを渡して去っていきましたそこで役立たずさっそくロザリオを首にかけると樫の木の根もとによこたわりましたするとロザリオは宙に浮かびはじめ役立たずのからだを吊りあげて天国へとのぼっていきましたところがほどなく役立たずの足は樫の枝に引っかかりどうしてもはずれなくなってしまいましたそれでもロザリオはとまろうとしなかったので役立たずは首がもげそうになりとても眠るどころではありませんでしたするとそこへ鉄砲をかついだ狩人がとおりかかりねらいをつけてロザリオを撃ちました石をつなぎとめていたひもがちぎれるとロザリオはばらばらになって空へ飛んでいきましたが役立たずのからだは下に落ちようやくまた自由に動けるようになりました。

わけを知った狩人あんな数珠を首にかけたところで天国へはけっして行けないよいいかいもうこんなことをしてはだめだからねと言いましたそういうわけで役立たずまた天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでしたけれども首のまわりにはが巻きついたような醜いあとがついてしまいもう二度と消えることがありませんでした。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新