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それから役立たずは、一本の大きな樫の木の下へたどりつきました。すると向こうから、年老いた醜い小人がやってきて「ごきげんよう、お嬢さん」とあいさつをしました。
そこで役立たずは「ありがとう、小人さん。でもあたし、ごきげんになんてなれっこないわ」と答えました。「だって、神さまがあたしをおつくりになったせいで、家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。
「それで、これからどうするつもりだね」。
「神さまをたずねて、みもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよ。でも困ったわ、どうしたら天国へ行けるのかわからないの」。
それを聞いた小人は「なんだい、そんなことも知らないのかね」と笑いました。そしてたくさんの赤い石がついているロザリオを取りだすと「だったらこの数珠をやろう。これは昔、ある綱屋が大切な娘の結婚式に持っていったものなんだがね、こいつを首飾りみたいに首にかけて、あとはただ眠っているだけでいい。目がさめたときには、ちゃんと天国についてるだろうさ」と言いました。
役立たずがおおよろこびでお礼を言うと、小人はロザリオを渡して去っていきました。そこで役立たずは、さっそくロザリオを首にかけると、樫の木の根もとによこたわりました。するとロザリオは宙に浮かびはじめ、役立たずのからだを吊りあげて天国へとのぼっていきました。ところが、ほどなく役立たずの足は樫の枝に引っかかり、どうしてもはずれなくなってしまいました。それでもロザリオはとまろうとしなかったので、役立たずは首がもげそうになり、とても眠るどころではありませんでした。するとそこへ、鉄砲をかついだ狩人がとおりかかり、ねらいをつけてロザリオを撃ちました。石をつなぎとめていたひもがちぎれると、ロザリオはばらばらになって空へ飛んでいきましたが、役立たずのからだは下に落ち、ようやくまた自由に動けるようになりました。
わけを知った狩人は「あんな数珠を首にかけたところで、天国へはけっして行けないよ。いいかい、もうこんなことをしてはだめだからね」と言いました。そういうわけで役立たずは、また天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでした。けれども、首のまわりには蛇が巻きついたような醜いあとがついてしまい、もう二度と消えることがありませんでした。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |