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異譚メルヘン第三話天国への道


それから役立たず深い谷へたどりつきましたすると向こうから年老いた醜い小人がやってきてごきげんようお嬢さんとあいさつをしました。

そこで役立たずありがとう小人さんでもあたしごきげんになんてなれっこないわと答えました。だって神さまがあたしをおつくりになったせいで家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。

それでこれからどうするつもりだね」。

神さまをたずねてみもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよでも困ったわどうしたら天国へ行けるのかわからないの」。

それを聞いた小人なんだいそんなことも知らないのかねと笑いました。だったら教えてやるがねなにもしなくていいんだよただ食べものも飲みものも口にしないだけであとは眠くなるまでじっと待てばいいしばらく時間はかかるかもしれんが目がさめたときにはちゃんと天国についてるだろうさ」。

役立たずよかったそれなら失敗のしようがないと考えておおよろこびでお礼をいいましたそして小人と別れると赤いコケにおおわれた洞窟の入り口をくぐり奥まで行って身をよこたえましたそうして長いこと待っているとついにまぶたが重くなり役立たずは深い眠りにつきましたところがずっとなにも口にしていなかったせいで寝ている役立たずのおなかはぐうぐうと大きな音で鳴っていましたするとそこへ仕事に向かうとちゅうの羊飼いがとおりかかりなんの音かと思って洞窟へ入ってきましたそして眠っている役立たずを見つけると連れていた羊のお乳をしぼってきてその口のなかへ流しこみました役立たずのおなかがいっぱいになって鳴りやむと羊飼いはまた自分の仕事へ戻っていきました。

やがて役立たずは目をさましましたがあたりがまっ暗なのでここはまだ天国じゃないらしいもうひと眠りしてみようと考えてもういちどまぶたが重くなるのをじっと待ちましたけれどもそれから役立たずが眠りに落ちるたびにおなかの鳴る音を聞きつけてあの羊飼いがお乳を飲ませに来るのでしたそういうわけで役立たずいつまでたっても天国へは行けずあいかわらず洞窟のなかでよこたわっているばかりでした。

そのうち役立たずとうとうしんぼうができなくなりましたそしてあたしはどこまでだめな子なんだろうこんな簡単なこともできないなんてと言うと神さまをたずねるのはあきらめてこのまま洞窟をあとにするよりほかありませんでしたけれどもあんまり長いあいだごつごつとした岩の上に寝ていたせいで背中や頭の皮がすっかりむけてしまい髪の毛も抜けて二度と生えてきませんでした。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新