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異譚メルヘン第三話天国への道


それから役立たず切りたった崖の上へたどりつきましたすると向こうから年老いた醜い小人がやってきてごきげんようお嬢さんとあいさつをしました。

そこで役立たずありがとう小人さんでもあたしごきげんになんてなれっこないわと答えました。だって神さまがあたしをおつくりになったせいで家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。

それでこれからどうするつもりだね」。

神さまをたずねてみもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよでも困ったわどうしたら天国へ行けるのかわからないの」。

それを聞いた小人なんだいそんなことも知らないのかねと笑いましたそして赤い土の色をした崖の下を指さすとだったら教えてやろうここからじゃ遠すぎて見えないがね天国はこの下にあるんだよもうひとつ足を踏みだしさえすればあとはただ眠っているだけでいい目がさめたときにはちゃんと天国についてるだろうさと言いました。

役立たずはおおよろこびでお礼を言うと小人に別れを告げましたそしてさっそく崖のふちに立つと言われたとおりに足を踏みだしましたすると役立たずのからだはまっさかさまに落ちていきましたが崖からはり出した岩にあちこちでぶつかるのでとても眠るどころではありませんでしたそうして落ちていくとやがて下のけしきが見えてきましたがただの地面のほかにはなにもありませんでした役立たずはあっというまにそこまでたどりつきはじけてばらばらになってしまいましたするとそこへ遍歴職人の仕立て屋がとおりかかりあちこちに散らばっている役立たずの切れはしを拾いあつめましたそして針と糸とで縫いあわせたので役立たずのからだはまたもとの姿に戻りました。

わけを知った仕立て屋はこんな崖の上から落ちたところで天国へはけっして行けないよいいかいもうこんなことをしてはだめだからねと言いましたそういうわけで役立たずまた天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでしたけれども仕立て屋がちょうど赤い糸しか持っていなかったので醜い縫いあとがからだじゅうに残ってしまいました。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新