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それから役立たずは、切りたった崖の上へたどりつきました。すると向こうから、年老いた醜い小人がやってきて「ごきげんよう、お嬢さん」とあいさつをしました。
そこで役立たずは「ありがとう、小人さん。でもあたし、ごきげんになんてなれっこないわ」と答えました。「だって、神さまがあたしをおつくりになったせいで、家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。
「それで、これからどうするつもりだね」。
「神さまをたずねて、みもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよ。でも困ったわ、どうしたら天国へ行けるのかわからないの」。
それを聞いた小人は「なんだい、そんなことも知らないのかね」と笑いました。そして赤い土の色をした崖の下を指さすと「だったら教えてやろう。ここからじゃ遠すぎて見えないがね、天国はこの下にあるんだよ。もうひとつ足を踏みだしさえすれば、あとはただ眠っているだけでいい。目がさめたときには、ちゃんと天国についてるだろうさ」と言いました。
役立たずはおおよろこびでお礼を言うと、小人に別れを告げました。そしてさっそく崖のふちに立つと、言われたとおりに足を踏みだしました。すると、役立たずのからだはまっさかさまに落ちていきましたが、崖からはり出した岩にあちこちでぶつかるので、とても眠るどころではありませんでした。そうして落ちていくと、やがて下のけしきが見えてきましたが、ただの地面のほかにはなにもありませんでした。役立たずはあっというまにそこまでたどりつき、はじけてばらばらになってしまいました。するとそこへ、遍歴職人の仕立て屋がとおりかかり、あちこちに散らばっている役立たずの切れはしを拾いあつめました。そして針と糸とで縫いあわせたので、役立たずのからだはまたもとの姿に戻りました。
わけを知った仕立て屋は「こんな崖の上から落ちたところで、天国へはけっして行けないよ。いいかい、もうこんなことをしてはだめだからね」と言いました。そういうわけで役立たずは、また天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでした。けれども、仕立て屋がちょうど赤い糸しか持っていなかったので、醜い縫いあとがからだじゅうに残ってしまいました。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |