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異譚メルヘン第三話天国への道


やがて役立たずたちは大きな街へたどりつきましたところがあんまりおおぜいの子どもがやってくるのを見てあやしんだ門番はなかへ入れてくれませんでしたちょうどそこへこの街の市長がとおりかかっていったいなんの騒ぎだねとたずねましたそこで役立たずは、

この子たちはみなしごでいままで育ててくれた人も死んでしまいましたどうかこの街に住まわせてやってくださいみんな心が清らかで天使のような子ばかりなんですと言いました。

すると市長はそれはお気のと言いました。しかしこれほどの数の子どもを受けいれるとなるとすぐにというわけにはいかないのだよまず市参事会に提議して問題がないか検討するきまりになっているたいへん残念だが今日のところはお引きとりを願いましょう」。

けれども役立たずはあきらめないで言いました。待ってください市長さんあなたに渡すものがあるんです」そして魔女からもらった鍵を取りだすとこの鍵でとざされている門をこの子たちのためにあけてやることはできないでしょうかとたずねました。

すると市長はおどろいてそれは私が母に贈ったものだと言いました。いったいなぜあなたが持っているのですか」。

そこで役立たずこれまであったことを残らず話して聞かせましたわけを知ると市長は役立たずの手を取ってなんとお礼を申せばよいのでしょうと言いました。それではあなたが私の母や伯母たちを看取ってくれたのですねわかりました子どもたちのことは私がなんとかしましょうどうぞこちらへおいでください」。

それから市長は門番に命じて役立たずたちをなかへとおさせると街でいちばん大きなお屋敷の前へと連れていきました。あなたが持ってきたのはこの屋敷の鍵なのですと市長は言いました。母のためにと用意したのですが気に入ってはもらえなかったようでいまも空き家のままになっていますよろしければ死んでしまった母のかわりにあなたがたでお使いくださいみんないっしょに住んだとしてもこれだけ広ければきゅうくつではないでしょう」。

こうして役立たず連れてきたみなしごたちとそこで暮らすことになりましたこの人はいまやどんなことでもじょうずにできるようになっていましたが子どもたちがみんなかわりにやってくれるのでもうなにもしなくてよいのでしたそしてまわりの人びとから大切にされながらなにひとつ不自由のない満ちたりた日々を送りそのあとの人生をお日さまの下で暮らす誰よりしあわせに過ごしたということですところでこの人が年を取って死んだあとほんとうに天国へ行けたかどうかは神さまだけがごぞんじです。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新