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やがて役立たずたちは、大きな街へたどりつきました。ところが、あんまりおおぜいの子どもがやってくるのを見て、あやしんだ門番はなかへ入れてくれませんでした。ちょうどそこへ、この街の市長がとおりかかって「いったいなんの騒ぎだね」とたずねました。そこで役立たずは、
「この子たちはみなしごで、いままで育ててくれた人も死んでしまいました。どうかこの街に住まわせてやってください。みんな心が清らかで、天使のような子ばかりなんです」と言いました。
すると市長は「それはお気の毒に」と言いました。「しかし、これほどの数の子どもを受けいれるとなると、すぐにというわけにはいかないのだよ。まず市参事会に提議して、問題がないか検討するきまりになっている。たいへん残念だが、今日のところはお引きとりを願いましょう」。
けれども、役立たずはあきらめないで言いました。「待ってください、市長さん。あなたに渡すものがあるんです」。そして、魔女からもらった鍵を取りだすと「この鍵で、とざされている門をこの子たちのためにあけてやることはできないでしょうか」とたずねました。
すると市長はおどろいて「それは、私が母に贈ったものだ」と言いました。「いったいなぜ、あなたが持っているのですか」。
そこで役立たずは、これまであったことを残らず話して聞かせました。わけを知ると、市長は役立たずの手を取って「なんとお礼を申せばよいのでしょう」と言いました。「それではあなたが、私の母や伯母たちを看取ってくれたのですね。わかりました、子どもたちのことは私がなんとかしましょう。どうぞこちらへおいでください」。
それから市長は、門番に命じて役立たずたちをなかへとおさせると、街でいちばん大きなお屋敷の前へと連れていきました。「あなたが持ってきたのは、この屋敷の鍵なのです」と市長は言いました。「母のためにと用意したのですが、気に入ってはもらえなかったようで、いまも空き家のままになっています。よろしければ、死んでしまった母のかわりにあなたがたでお使いください。みんないっしょに住んだとしても、これだけ広ければきゅうくつではないでしょう」。
こうして役立たずは、連れてきたみなしごたちとそこで暮らすことになりました。この人はいまや、どんなことでもじょうずにできるようになっていましたが、子どもたちがみんなかわりにやってくれるので、もうなにもしなくてよいのでした。そしてまわりの人びとから大切にされながら、なにひとつ不自由のない満ちたりた日々を送り、そのあとの人生を、お日さまの下で暮らす誰よりしあわせに過ごしたということです。ところで、この人が年を取って死んだあと、ほんとうに天国へ行けたかどうかは、神さまだけがごぞんじです。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |