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それから役立たずは、暗い森のそばへたどりつきました。すると向こうから、年老いた醜い小人がやってきて「ごきげんよう、お嬢さん」とあいさつをしました。
そこで役立たずは「ありがとう、小人さん。でもあたし、ごきげんになんてなれっこないわ」と答えました。「だって、神さまがあたしをおつくりになったせいで、家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。
「それで、これからどうするつもりだね」。
「神さまをたずねて、みもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよ。でも困ったわ、どうしたら天国へ行けるのかわからないの」。
それを聞いた小人は「なんだい、そんなことも知らないのかね」と笑いました。そして近くに建っていた赤い煙突のある小屋を指さすと「だったら教えてやろう。あの炭焼き小屋は煙突がつまってるんだがね、なかへ入って窓と戸をしっかりしめたら、かまどの炭に火をつけて、あとはただ眠っているだけでいい。目がさめたときには、ちゃんと天国についてるだろうさ」と言いました。
役立たずはおおよろこびでお礼を言うと、小人に別れを告げました。そしてさっそく小屋に入ると、しっかりと戸じまりをして炭焼きをはじめました。すると小屋じゅうに煙がたちこめて、あっというまになにも見えなくなりました。役立たずは床によこたわりましたが、息をするたびに煙を吸ってむせるので、とても眠るどころではありませんでした。するとそこへ、斧をかついだ木こりがとおりかかり、小屋の戸をこわしてなかへ入りました。そしてかまどに砂をかけたので、ようやくあたりの煙が晴れ、役立たずもまたむせずにすむようになりました。
わけを知った木こりは「こんな小屋で炭を焼いたところで、天国へはけっして行けないよ。いいかい、もうこんなことをしてはだめだからね」と言いました。そういうわけで役立たずは、また天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでした。けれども、あんまりたくさん煙を吸いこんだせいで、もう口をひらいても醜くしわがれた声しか出てきませんでした。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |