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異譚メルヘン第三話天国への道


それから役立たずけわしい雪山のふもとへたどりつきましたすると向こうから年老いた醜い小人がやってきてごきげんようお嬢さんとあいさつをしました。

そこで役立たずありがとう小人さんでもあたしごきげんになんてなれっこないわと答えました。だって神さまがあたしをおつくりになったせいで家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。

それでこれからどうするつもりだね」。

神さまをたずねてみもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよでも困ったわどうしたら天国へ行けるのかわからないの」。

それを聞いた小人なんだいそんなことも知らないのかねと笑いましたそして赤い夕日がしずもうとしている山のいただきを指さすとだったら教えてやろうここからじゃ遠すぎて見えないがね天国はこの上にあるんだよもしのぼるのに疲れたらあとはただ眠っているだけでいい目がさめたときにはちゃんと天国についてるだろうさと言いました。

役立たずはおおよろこびでお礼を言うと小人に別れを告げましたそしてさっそく山道に入ると頂上をめざしてのぼりはじめましたところがしばらくするとあたりはすっかり雪にとざされどこが道だかわからなくなりましたそういうわけで役立たずはいつしかこおった湖の上へと迷いこみ雪の下に隠れていた氷の裂けめをそうとは知らずに踏み抜いてしまいましたまわりの氷がとてもあつかったので裂けめが広がることはありませんでしたが踏み抜いた片足はひざまでそのなかにはさまりどうやっても抜けなくなりましたやがて役立たずのからだはこごえはじめくずれるようにその場へよこたわりましたが固い氷がひどく足をしめつけるのでとても眠るどころではありませんでしたするとそこへ巡礼の旅人がとおりかかり役立たずを引っぱりあげて近くの山小屋へ運んでいきましたそして暖炉に火をおこしてあたためたので役立たずの手足はまた動くようになりましたけれども湖のなかにつかっていた片足だけはすっかりこおりついていて炎にかざそうと動かしたはずみにくだけてこなごなになってしまいました。

わけを知った旅人はこんな山をのぼったところで天国へはけっして行けないよいいかいもうこんなことをしてはだめだからねと言いましたそういうわけで役立たずまた天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでしたけれどもくだけてしまった片足はもうもとには戻りませんでした。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新