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それから役立たずは、けわしい雪山のふもとへたどりつきました。すると向こうから、年老いた醜い小人がやってきて「ごきげんよう、お嬢さん」とあいさつをしました。
そこで役立たずは「ありがとう、小人さん。でもあたし、ごきげんになんてなれっこないわ」と答えました。「だって、神さまがあたしをおつくりになったせいで、家族がたいへんな思いをしなければならないんですもの」。
「それで、これからどうするつもりだね」。
「神さまをたずねて、みもとに置いてもらえないか聞いてみるつもりよ。でも困ったわ、どうしたら天国へ行けるのかわからないの」。
それを聞いた小人は「なんだい、そんなことも知らないのかね」と笑いました。そして赤い夕日がしずもうとしている山のいただきを指さすと「だったら教えてやろう。ここからじゃ遠すぎて見えないがね、天国はこの上にあるんだよ。もしのぼるのに疲れたら、あとはただ眠っているだけでいい。目がさめたときには、ちゃんと天国についてるだろうさ」と言いました。
役立たずはおおよろこびでお礼を言うと、小人に別れを告げました。そしてさっそく山道に入ると、頂上をめざしてのぼりはじめました。ところがしばらくすると、あたりはすっかり雪にとざされ、どこが道だかわからなくなりました。そういうわけで、役立たずはいつしかこおった湖の上へと迷いこみ、雪の下に隠れていた氷の裂けめを、そうとは知らずに踏み抜いてしまいました。まわりの氷がとてもあつかったので、裂けめが広がることはありませんでしたが、踏み抜いた片足はひざまでそのなかにはさまり、どうやっても抜けなくなりました。やがて役立たずのからだはこごえはじめ、くずれるようにその場へよこたわりましたが、固い氷がひどく足をしめつけるので、とても眠るどころではありませんでした。するとそこへ、巡礼の旅人がとおりかかり、役立たずを引っぱりあげて近くの山小屋へ運んでいきました。そして暖炉に火をおこしてあたためたので、役立たずの手足はまた動くようになりました。けれども、湖のなかにつかっていた片足だけはすっかりこおりついていて、炎にかざそうと動かしたはずみに、くだけてこなごなになってしまいました。
わけを知った旅人は「こんな山をのぼったところで、天国へはけっして行けないよ。いいかい、もうこんなことをしてはだめだからね」と言いました。そういうわけで役立たずは、また天国へつづく道をさがして歩いていかなければなりませんでした。けれども、くだけてしまった片足はもうもとには戻りませんでした。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |