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それから役立たずは、大きな街へやってきました。そこで、あたりの家々をたずねては「どうかここに置いてください、どんな仕事でもしますから」と頼んでみたのですが、どこにもやとってくれるところはありませんでした。その醜い首のあざや、しわがれた声に気がつくや、誰もが首を横に振り、
「気の毒だけど、うちには置いてやれないよ。どこかよそをさがしてごらん」と答えるのです。それからわずかばかりのパンを手渡すと「神さまがお守りくださいますように」と言って、戸をしめてしまうのでした。
そうして街じゅうをまわり歩いているうちに、役立たずはすっかりおなかがすいてしまいました。そこで、あちこちの救貧院をたずねては「どうかミルクをわけてください。ほんの少しでかまいませんから」と頼んでみたのですが、どこにもわけてくれるところはありませんでした。そのなくしてしまった片手や、からだじゅうの醜い縫いあとに気がつくや、誰もが首を横に振り、
「気の毒だけど、うちではわけてやれないよ。どこかよそをさがしてごらん」と答えるのです。それから役立たずに向かって十字を切ると「神さまがおゆるしくださいますように」と言って、門をしめてしまうのでした。
そうして街じゅうをまわり歩いているうちに、すっかり日が暮れて暗くなってしまいました。そこで役立たずは、街かどで施しをもらって暮らしている人たちを見つけては、もらったパンをふるまいながら「どうかひと晩泊めてください、どんなところでもかまいませんから」と頼んでみたのですが、どこにも泊めてくれるところはありませんでした。そのなくしてしまった片足や、皮がむけた髪のない頭に気がつくや、誰もが首を横に振り、
「気の毒だけど、うちには泊めてやれないよ。どこかよそをさがしてごらん」と答えるのです。それからパンをふところへしまうと「神さまの祝福がありますように」と言って、足早に去っていってしまうのでした。そういうわけで役立たずは、このまま街を出ていくよりほかありませんでした。
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著者:結社異譚語り | |||
2008年 | 11月 | 24日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |