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異譚メルヘン第三話天国への道


それから役立たず大きな街へやってきましたそこであたりの家々をたずねてはどうかここに置いてくださいどんな仕事でもしますからと頼んでみたのですがどこにもやとってくれるところはありませんでしたその醜い首のあざやしわがれた声に気がつくや誰もが首を横に振り、

気のだけどうちには置いてやれないよどこかよそをさがしてごらんと答えるのですそれからわずかばかりのパンを手渡すと神さまがお守りくださいますようにと言って戸をしめてしまうのでした。

そうして街じゅうをまわり歩いているうちに役立たずはすっかりおなかがすいてしまいましたそこであちこちの救貧院をたずねてはどうかミルクをわけてくださいほんの少しでかまいませんからと頼んでみたのですがどこにもわけてくれるところはありませんでしたそのなくしてしまった片手やからだじゅうの醜い縫いあとに気がつくや誰もが首を横に振り、

気のだけどうちではわけてやれないよどこかよそをさがしてごらんと答えるのですそれから役立たずに向かって十字を切ると神さまがおゆるしくださいますようにと言って門をしめてしまうのでした。

そうして街じゅうをまわり歩いているうちにすっかり日が暮れて暗くなってしまいましたそこで役立たず街かどで施しをもらって暮らしている人たちを見つけてはもらったパンをふるまいながらどうかひと晩泊めてくださいどんなところでもかまいませんからと頼んでみたのですがどこにも泊めてくれるところはありませんでしたそのなくしてしまった片足や皮がむけた髪のない頭に気がつくや誰もが首を横に振り、

気のだけどうちには泊めてやれないよどこかよそをさがしてごらんと答えるのですそれからパンをふところへしまうと神さまの祝福がありますようにと言って足早に去っていってしまうのでしたそういうわけで役立たずこのまま街を出ていくよりほかありませんでした。


著者結社異譚語り
2008年11月24日ページ公開
2011年9月4日最終更新