◆ Märchen << HKM4 < i ii iii iv v vi vii viii ix x xi xii xiii
こうしてお城では、ふたりの結婚式がたいそう盛大におこなわれました。やがて夜もふけると、あつまっていた人たちに見送られ、王子さまと若いお妃さまは大広間をあとにしました。ところでこの美しい花婿は、寝室で花嫁とふたりきりになると「このあとのことだけど、ひとつわがままをゆるしてもらえるだろうか」とたずねるのでした。「今夜はね、別々に眠りたいと思っているんだ」。
それを聞いたお妃さまは、きっとこの花婿はとてもつつしみ深い人なのだ、と考えて「ええ、かまわないわ」と答えました。すると王子さまは、
「勝手を言ってごめんね。わたしは奥の部屋でやすむけど、どうか朝までそっとしておいてほしい。たとえなにがあったとしても、ようすを見に来たり、戸をあけたりしてはいけないよ」と言いました。そしていとしい花嫁の頬におやすみの口づけをすると、奥の小部屋へ入って戸をしめてしまいました。そこでお妃さまも明かりを消して、広いベッドにひとりで眠りにつきました。
さて、次の日もお城では、まだ婚礼のおいわいがつづけられていました。大広間には王族や貴族のご婦人がたがあつまって、若いお妃さまのことを待ちかまえていました。この人たちは、自分たちの新しいお仲間と、早くお近づきになりたかったのです。そしてお妃さまが姿をあらわすと、みんなでまわりを取りかこみ、あれこれと話を聞きたがりました。とりわけご婦人がたは、あの美しい王子さまがなぜ結婚する気になったのか、どうしてもふしぎでなりませんでした。それというのも、これまでどんなに美しいお姫さまも、けして王子さまの気を引くことができず、誰ひとりとして親しくなれたものはいなかったからです。
そうしておしゃべりをしているうちに、やがてみんなは口をそろえて、王子さまが昨日の夜、どんなようすだったのかとたずねました。そこでお妃さまは「あたしたち、昨日は別々の部屋でやすみました。だから、王子さまがどうしていたのかはわかりません」と答えました。すると、ご婦人がたはおどろいて顔を見あわせ、それからおかしそうにくすくすとしのび笑いをもらしたので、お妃さまはひどく恥ずかしい思いをしなければなりませんでした。
ところで、その夜も王子さまは、寝室で花嫁とふたりきりになると「このあとのことだけど、今夜もまた別々に眠ってくれるだろうか」と言うのでした。それを聞いたお妃さまは、
「ねえ王子さま、それはどうしてなの? わけがあるなら教えて」とたずねました。けれども美しい王子さまは、
「いまはまだ、君には話せないんだよ。でもね、どうしてもそうしなければならないんだ。わたしのことを愛してくれているのなら、どうかなにも聞かずにゆるしてはもらえないだろうか」と答えるばかりで、けしてわけを言おうとはしませんでした。そこでとうとうお妃さまも、
「わかったわ」と答えるよりほかありませんでした。するとこの美しい王子さまは、花嫁の頬におやすみの口づけをして、奥の小部屋へと姿を消しました。そしてお妃さまも、またひとりっきりで眠りにつきました。
さて、そのまた次の日も、大広間にはやっぱりあのご婦人がたがあつまっていました。この人たちはこんどこそ、若いお妃さまと美しい王子さまが、どんな夜を過ごしたのか聞けると思っていました。そこでお妃さまは「あたしたち、昨日はいっしょにやすみました。王子さまは、あたしのことをやさしく抱きしめてくれました」とうそをつきました。けれどもご婦人がたは、そんな言葉ではちっとも満足せずに、もっとくわしい話が聞けるまで、けしてゆるしてくれませんでした。お妃さまはそれに答えることができず、うそをついたことがわかってしまい、昨日よりもいっそう恥ずかしい目にあいました。
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著者:結社異譚語り | |||
2009年 | 9月 | 21日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |