◆ Märchen << HKM4 < i ii iii iv v vi vii viii ix x xi xii xiii
やがて、ふたりが言ったとおりのことがおこなわれました。むさくるしい花嫁たちは、豪奢なドレスをはぎ取られ、すっかりはだかにされました。すると、この人たちがほんとうは男だったことが、誰の目にも明らかとなりました。そこへ鉄の乙女像が運ばれてきて、ふたりはいっしょにそのなかへ押しこめられ、前には黒い馬がつながれました。ふたつの目玉を抜かれると、この馬は狂ったように走りだし、庭園じゅうをさんざんかけずりまわったので、咲いていたばらの花が残らず散って、まっ赤な花びらで地面がすっかりおおわれてしまったほどでした。それから黒い馬は、乙女像を引いたまま城門のそとへ飛びだしていって、もう二度と戻ってくることはありませんでした。
そのあとお城では、ほんとうのお妃さまと王子さまが、もういちどふたりで結婚式をあげました。ところがこの美しい花嫁は、花婿があんまり凛々しくなってしまったので、胸がどきどきしてまっすぐに顔を見ることもできませんでした。そして、花婿が口づけを交わそうとすると、すっかり赤くなってうつむいてしまうのでした。するとこの花婿は、かわりに花嫁のおでこに口づけし、手を取って踊りに誘いました。そんなわけで、ふたりが大広間のまんなかで楽しく踊っていると、ふいに熊の毛皮をかぶった男があらわれて、
「おまえさんの兄弟たちのせいで、庭園のばらがみんな散ってしまったよ。まったく困ったことになったもんだ」と嘆きはじめました。「だからおまえさん、また昔のようにあいつらの世話をして、きれいな花を咲かせてくれんかね?」
けれども美しい花嫁は「いいえ、できないわ」と答えました。「だってあたし、これから王子さまといっしょに薬草を育てるんだもの」。
「わざわざ頼みに来たってのに、そいつはまったく残念だ」と男は言いました。「ところで、おまえさんはいま、やっぱりしあわせなんだろうね?」
そこで花嫁は「ええ、とっても」とすなおに答えました。「いままであたし、この人よりすてきなお婿さんなんていないと思ってたわ。でもそうじゃなかったの。魔女の呪いが解けた王子さまは、昔の千倍もすてきになってしまったんだもの。もうあたし、ほかに望むことなんてひとつもないわ」。すると、それを聞いた熊の毛皮男は、
「おまえさんが言うんなら、もちろんそのとおりなんだろうさ。いつまでもそのままでいるがいい」と言いました。そんなわけで、このお城ではいまもまだ結婚式がつづけられていて、美しいお妃さまとすてきな王子さまは、あいかわらずしあわせに踊りまわっているということです。
Home <<<
Mächen <<
HKM4 <
?
←
Page. 13 / 13
↑
著者:結社異譚語り | |||
2009年 | 9月 | 21日 | ページ公開 |
2011年 | 9月 | 4日 | 最終更新 |